「この商品、赤字だ!」ってホント? 利益率の落とし穴

会社の数字を見始めたとき、「この商品の利益率は低いから、もっと改善しないと」と上司から言われることがあるかもしれません。でも、ちょっと待ってください。その計算、本当に会社の役に立っていますか?


危険な計算方法:「稼働時間で割り算」

商品ごとの利益率を計算しようと考えたとき、多くの人がやってしまいがちなのが、オフィス全体の家賃や、経理部の給料を、商品の「稼働時間」や「売上」で割り振るという方法です。

例えば、

  • 商品Aを作るのに10時間かかった。
  • 商品Bを作るのに1時間かかった。

だから、「家賃や給料の10/11を商品Aに、1/11を商品Bに割り当てよう」と考えるわけです。

一見、公平な割り当てに見えますよね?しかし、ここに大きな間違いがあります。


なぜこの計算は間違いなのか?

それは、家賃や給料は、特定の商品を作るために直接かかった費用ではないからです。

考えてみてください。オフィスの家賃や、経理部の給料は、たとえ商品Aや商品Bが1つも売れなくても、毎月必ず発生します。これらは、会社全体を動かすために必要な「固定費」なんです。

もしあなたが「利益率が低いから」という理由で商品Aの販売を中止したとしましょう。残念ながら、オフィスの家賃や経理部の給料は、1円も減りません。

商品Aが稼いでいた売上(正確には「限界利益」)がなくなってしまい、その分、会社全体の利益が減ってしまうことになります。つまり、良かれと思ってやったことが、かえって会社全体の利益を減らす結果になるのです。


本当に大切な指標とは?

では、何を基準に考えるべきなのでしょうか?

大切なのは、「もしこの商品を作ったら、費用はどれだけ増えるか?」という視点です。

例えば、新しい商品Cを開発したとしましょう。

  • 商品Cを作るために、材料費が新しくかかった → これは増える費用(変動費)です。
  • でも、家賃や経理部の給料は、商品Cを作っても増えません → これは固定費です。

商品Cが売れて得られる利益(売上から変動費を引いた「限界利益」)が、会社全体の固定費を少しでもカバーできれば、それは会社にとってプラスになります。

だから、「商品Aをやめたら、全体の利益がどうなるか?」を考えることが、本当に正しい経営判断をする上で重要です。


まとめ:数字のワナに気をつけよう!

「商品ごとの利益率」という数字は、一見わかりやすいですが、会社全体の利益を減らしてしまう危険な意思決定につながることがあります。

何かを判断するときは、「増える費用は何か?」「減る費用は何か?」という視点を忘れないでください。これこそが、数字のワナにはまらず、賢い判断をするための鍵です。